
|
亡くなる時期をどうしたら見分けることができるのか。いよいよ臨終が近いということになりますと、食事の摂取量も減りますし、また脱水症状も出るという話をしましたが、尿が減量するというのも一つのポイントです。腎臓への影書から筋が刺激的に動くということがよくあります。ミオクローヌスという反射的な動きがあるのです。
脈拍が低く遠くなる状況が起きると、いよいよ死が近いということです。それから末梢血が行き渡らなくなるということで指の光とか鼻が冷たくなったり、唇に血が回らなくなるというのも一つの現れです。朦朧とか錯乱の時間が長くなるのも一つのポイントです。
寝具をはねのけたい、重いとか暑いとか患者さんは訴えるのですが、患者さんに触ってみると体温がかなり落ちていて体が冷たいというような状況があります。酸素が欠乏していると本人が思うので、寝具が重く感じられ、払いのけたいというのではないかと思います。呼吸が速くなります、それから粘液がゼロゼロしてきます。顔色も蒼白になりますし鼻も白くなります。ナースならこれはもう感覚的なもので、見たらパッとわかる感じだと思います。患者さん本人もつらいといって苦痛を訴えるはずです。できればそういった症状を訴えたときにそれを緩和することです。死ぬ最期のときまでそういった症状をマネージすることができるはずです。
症状緩和の薬剤
最期の症状を緩和するためにいろいろな薬がまだ使えるので、その薬のリストをこれからお教えしますが、この時点になって止めるべき薬というのもまたあるのです。ステロイド、抗生剤、NSAID、抗うつ剤などはそこで打ち切るべきです。利尿剤というのもいままでは役に立ったかもしれませんが、いよいよの時には無用の薬の一つです。一般論としては利尿剤は無用ですけれども、肺の浮腫が相当大きくなっていてそのためにつらいといったような場合には、静注での注射または筋肉注射によって利尿剤を使うこともあります。
これまでは止めるべき薬だったのですが、最期の時点で使うべき薬としては4種類あります。鎮痛剤、その他催眠、鎮静剤、制吐剤です。
気管から出てくる粘液には抗ムスカリン剤を使います。それは家族の気持ちを和らげるのに役に立ちます。それから抗痙戀剤も必要になるかもしれません。
最期の24時間にどういう問題が出てくるかということを先取りする必要があります。たとえば家で死にたいというのであれば家に帰る準備をしなければなりませんし、それからベッドの周りに親戚を集めるというようなことも必要でしょう。
衰弱の臨床的な症状が何かということもキャッチすべきです。いままでいろいろ投与していた薬を見直して不要だと思われるものは止めること。薬の投与のルートも見直す必要があります。嚥下が困難になった患者さんに経口でものを飲ますことはできないからです。英国では最期のときは皮下注射をするのが一般的です。
チームのそれぞれの役割
この時点で心理的・社会的な面のマネージメントをどうするかということをお話ししたいと思いますが、チームの中のそれぞれの役割が何であるかということをお互いに理解しておく必要があります。それぞれの役割分担が必ずしも明解でないところもあるからです。チームケアだといっても、それぞれ違った分野の人たちと一緒に作業をして、仲良く友達としてやっていくのは難しいときもあるだろうと思います。
患者が亡くなるということで家族の苦しみや嘆き、その経験を理解するということが大切だと思います。一人一人の経験は違うわけですから。患者さんの中にはとにかく自分の気持ちを話したい、聞いてもらいたい、情感を訴えたい人もありますし、全然そんなことは話したくないという患者さんもいるからです。ですから患者さん一人一人に対して死ぬということをどう扱うべきかをこちら側としては方針としてもっていることが必要だと思います。いよいよ死ぬということ壱自分が悟りますと、患者さん本人もショックの状態ですから、質問すべきこともなかなかうまく質問できないという状況になります。患者さん本人とその家族では、恐怖心がそれぞれ違うだろうと思うのです。いま世界的に一般的に認められているのは、患者さんはできるだけ情報がほしいということだと思います。
前ページ 目次へ 次ページ
|

|